剪定

 我が家にもわずかばかりの庭がある。猫の額には多くの木が埋まっている。北側には榊の生垣、南にはやはり生垣だが名前は知らない。東側には金木犀やボケ、柿木もあれば千両万両もある。最近では紫陽花も青い花を咲かせている。地面には植えたばかりの朝顔が出番を待っている。
 お天気の良い日曜日、紅葉の枝が気になるので剪定を始めた。南側で我が物顔に枝を伸ばしている。以前女房が手の届くところだけを切ってしまい、手が届かず剪定を逃れた枝が上へ上へむやみに伸びて、廃屋の庭にある伸び放題の植木のような悲惨な状態だ。その「我が物顔の枝」を切ってしまいたかった。
 手の届く若い枝たちを切ってしまったため、そこへ行くはずだった栄養がすべて「我が物顔の枝」に行過ぎてしまい、ますます勢いを得て増長した「我が物顔」の枝たちを切るのはなんと気持ちのよいことか。脚立に上り手を伸ばし「パチン、パチン」とにやにやしながら切っていく。
 「我が物顔の枝」を切るのは早いほうが良い。せっかく伸びようとする若い枝が育たなくなる。「我が物顔の枝」は見ればすぐに分かる。全体のバランスを崩し、お構いなく上へ上へ伸びていくのだから目立たないわけがない。目立った枝を「パチン、パチン」と切ってやればいいのだ。早ければ早いほど若い枝が救われる。
 それでは「我が物顔の枝」にならないためにはどうすればいいのか。目立たないように伸びることだ。全体のバランスを保ちながら目立たぬように伸びることだ。周りの成長を待ち、共に伸びることが大事だ。