故郷

故郷、彦島は数分も歩くと磯がある。小さいときからよく釣りに行った。磯では、ケビや本虫がとれ、それを餌にする。関東に来て分かったが、ケビとはジャリメのこと、本虫とは岩イソメのことらしい。磯では、メジナがよく釣れた。アブラメ、タナゴ、はぜも釣った。竿は自家製で、先に釣り糸をつけただけ、父の竿には触らせてもらえなかった。
磯では蟹や、ニイナもとれた。従兄はよくサザエや、とこぶしを潜って採っていた。祖母などは、岩のりを、わらを焼いて粉にしたものをまぶしながら器用に採っていた。粉付きの岩のりは自宅でよく洗い、包丁で叩きながら細かくしてすのこに貼り付け、天日干しをする。カリカリに乾くとはがす。はがすのが面白く、よく手伝った。海産物は買ったことがない。
そんな田舎のこと、中学からの弁当には、毎日のように魚が入っていた。2年生になったときには、クラスで評判になり、弁当を開くと友人が覗きに来たものだった。それくらい魚を食べると、普通は嫌いになるものだが、今でも肉よりも魚のほうが口に合っている。
友人の弁当を覗くとおいしそうなポークソーセージがいて一度食べてみたいと思ったことがある。いつも欲しいと思っていると願いは叶うもので、友人が「食べない?」と箸でよこしてくれた。そのときの味は今でも忘れない。ポークソーセージは丸大に限る。