隻手の音声

toshiaki_yamai2004-08-10

毎朝、写真の彼と散歩する。家の南側には本郷台から上郷までつながるいたち川がある。その両岸を多くの犬が毎朝散歩する。7年前にこちらに移り住んだときには、出会う人たちは見ず知らず、なかなか挨拶ができなかった。ある日勇気をもって「おはようございます」と声をかけた。はっ、としながらも向こうから「おはようございます」という返事が返ってきた。そのときは、ちょっとした朝の感動だった。
「隻手の音声」とは、両手で手を合わせるように打つとパンと激しい音を立てるが、片手では音は出せない。しかし、片手でも音が聞こえるようになれ、という禅の考え。とかく相手のことを勝手に気遣い、朝の散歩は静かにしたいのではないか、とか、見ず知らずの人から挨拶されたくないのではないか、などと余計なことを考え知らん振りして通り過ぎていく。少しだけ勇気をもって、こちらから「おはようございます」と声をかけると、掛けたこちらの隻手も気持ち良い。知らない人でもほとんどの人は勝手な隻手に応えてくれる。そこで初めて「パン」という音となる。
人は変えられないから自分が変わる、そんなことにも通じる。そう思ってしまえば、何事も人のせいにはせず、人に腹をたてることもなくなる。